お昼に毎日ご来店されるお客様がいる。定休日の月曜を除いて火曜から日曜まで、風邪などを引いて体調がよくないとき意外、とにかく毎日いらっしゃる。それがもう2年ぐらい続いているのだ。お歳は80歳ぐらい。ご主人を亡くして一人で生活しているおばあちゃまである。
しかし、普通のおばあちゃまではない。とにかくグルメというか、美味しい物しか受け付けないのである。まさに食道楽と言ってもよい。
ご主人が大きな会社を経営していたので、生活にはまったく困らないほど残してくれたと伺った。だから、そんなことができるのだろう。
そのおばあちゃんが、1月に心臓の手術をし、無事退院したのだが、1日24時間のうち22時間も酸素吸入をしなければならなくなった。
その話を聞いたとき、あれほど食べることが好きで、唯一の楽しみだったのに、もううちの店にもこれなくなっちゃったなぁ~、と思った。ところが、これがまったく読みが甘かった。
「お医者さんが言うには、24時間のうち2時間だけ酸素吸入をしなくてもいいとのことなので、その2時間を使って、これからも毎日、食べに伺いますので、よろしくお願いします。」
と電話があったのだ。
世の中には、食通だとか、グルメだとか、食べることが何よりも大好きな人が大勢いらっしゃると思うが、このおばあちゃまのようになっても、自分の流儀を押し通すと言うか、食べることを諦めずにおけるグルメ自慢がいったいどれほどいるだろうか。
このおばあちゃまこそ、一流のグルマンではなかろうか。めし屋のオヤジとして、心から尊敬するしだいである。
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