京都に『山ばな平八茶屋』という店があります。ここは京都で最も古い料理屋さんで創業430年、当代で20代目です。(だったと思う。)
始まりは街道茶屋で、場所は若狭街道の中途にあります。今ではもう街中ですが、そのころは、都まであと半日の距離にあり、ここらへんで一服しよか、という位置だったろうと思われます。
その時代から、その店の名物(伝承料理)である『麦めしとろろ汁』を現在に至るまで出し続けておられ、そのウルトラワンパターンの姿勢にはまったくもって驚愕させられます。
たしかに始めたころ(500年前)はご馳走だったことでしょう。しかし、戦後、経済が飛躍的に発展し、日本が豊かになって飽食になるにしたがって、相対的に値打ちは引き下げられ、今では「麦とろ」をご馳走だと思う人は少ないはずです。なかには取るに足らないという人さえいるぐらいですから、街道茶屋としてではなく、今の時代の感性に合わせた、今の人たちの嗜好を満足させる「新・名物料理」を考案してもよさそうなものです。
しかし、平八さんは今も悠然と作りつづけておられます。店の看板料理ということだけでは説明のできない、まるでひとつの哲学にまで昇華しているように感じます。あるいは、伝統に裏打ちされた精神の強靭さと言えるんでしょうか。
麦とろは、消化の悪い麦めしと自然薯のジアスターゼの組み合わせです。科学だの、栄養だの、ましてや健康志向だのと言わなくとも、自然薯の掘れるところで麦とろを作る。そしてそれを作りつづけている。毅然として、媚びのかけらもない。えらいものだと思います。
そういう京料理に惹かれて、はや30年が経ちました。
本当にいい料理とは、時を経たときにも光り、時を重ねるほど輝きを増す。
そして、そんな上等の料理を上等と見極める力が、「作り手」にも、「食べ手」にも、必要なのだろうと、ここ数日、しみじみと感じます。
ただいま、8月の献立を考え中。8月は「とろろごはん」をやろっと。。。
松坂屋で、職人展をやっていましたので、うちわを買ってきました。木の部分は年輪を見るとわかるのですが、どうもあの希少な「屋久杉」を使っているようです。これには驚きました。玄関に飾ってあります。
調理場、朝の様子。
これも同じ。
今週いっぱい、この暑さが続くようです。みなさま、くれぐれもご自愛を。
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