輪島塗の名人、中津正克先生。右は息子さんです。 名古屋ドームで行われていた「やきものワールド」が終わり、明日輪島に帰るとまた一年会えないからと、わざわざ店のほうまで来てくださいました。誠に恐縮の極みであります。本当にありがとうございました! 中津正克先生は、輪島でただ一人、銀漆器を製作している方です。現在、伝統的な輪島塗師は輪島に100名強しかいませんが、そのなかで、いぶし銀を塗り込む技術では、中津先生の右に出るものを知りません。 「漆器の世界では、朱や黒の上に蒔絵や沈金をするのが一般的ですが、私の目指す美の本質は、銀の粗目に蒔絵を描いていくという仕事です。」とおっしゃっています。 製作は、粗めの銀を長い年月をかけて丹念に塗り込んでゆき、そのあと丁寧に磨きあげます。そのような気の遠くなるような工程を経た漆器は、文字通りいぶし銀の輝きを放ち、その色合いは、歳月の経過とともに深みを増し、趣を増してゆきます。 その代表的な作品として、「銀地水差蒔絵」という水差しがあるのですが、東京の三越本店から、値段1200万円で展示させてくれ、という話しを「卸すのは嫌いだから断った」という頭がクラクラするようなエピソードをお持ちでいらっしゃいます。 また、長年にわたり皇室の漆器製作をされていることからも、塗師としての技術力の高さを証明しています。 人間的にも本当にすばらしい方で、心から尊敬しております。 今回、ついでに、あつかましくも、無謀を承知で、江戸時代?(器屋さんはそう言ってたが確証はなし。)の根来の大鉢の修理をお願いしちゃいました。中津先生は、「これは本当の朱ではない。木が動いたから漆がはがれた。これは輪島塗ではないけど、輪島塗のやり方で、直していいね。」とおっしゃっていました。
中津先生の熨斗椀。ちなみにそのお値段は、なんと!1客18万円。おそらく天皇陛下も、このお椀でお雑煮を食べているんじゃないかと空想するだけで、なんだか楽しくなってきます。
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